統合報告

ステークホルダーインタビュー

「Made by ZOZO」でブランドの挑戦を後押し。
過剰生産の課題に受注生産プラットフォームで挑む

株式会社ZOZO
生産プラットフォーム開発本部 本部長

鈴木 大輔

株式会社TSI ナノ・ユノバース事業部長

大塚 有希

「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」をサステナビリティステートメントに掲げ、ファッションを楽しみ続けられる社会の実現を目指す「ZOZO」。その手段として取り組んでいる重点取り組みの一つが、「廃棄ゼロを目指す受注生産プラットフォームの構築」です。

ファッション業界は、国連貿易開発会議から「世界第2位の環境汚染産業」と指摘されるなど、サステナビリティの観点から多くの課題を抱えています。とりわけ大量生産・大量廃棄が問題視されており、これを解決しないことには持続可能な社会を実現することは不可能です。

こうした状況下で、ZOZOは2022年にファッションブランドの在庫リスクゼロを目指す生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」をリリース。受注生産方式で製品をつくることにより、在庫リスクを軽減し、環境問題の解決を目指しています。

受注生産方式の広がりは、ファッション業界が抱える課題の解決にどれほど寄与できるのか——。

ZOZO 生産プラットフォーム開発本部 本部長 鈴木 大輔と、株式会社TSI ナノ・ユノバース事業部長 大塚 有希氏の対談を通じ、ファッション業界が抱える課題とその解決策について考えていきます。

ファッション業界は「世界第2位の環境汚染産業」

— 国連貿易開発会議によると、ファッション業界は「世界第2位の環境汚染産業」と言われています。こうした現状には、どのような問題が関係しているのでしょうか。

大塚 : 根本にあるのは衣類の「過剰生産」だと考えています。

日本では、1年間におよそ約37億着(※1)の洋服が国内に供給されていますが、約3割にあたる11億着が売れ残っています(※2)。必要以上に、洋服をつくりすぎているんです。なぜこれほど大量の衣類がつくられるかというと、発注量の問題に行き着きます。

お客様に購入していただきやすい価格帯で販売するには、原価率の観点から小ロットでの発注は難しく、どうしても必要以上の量を発注することになってしまいます。

とはいえ、それはブランドの都合です。ブランドを運営する人間として、非常に心苦しいことだと感じています。

鈴木 : 必要な衣類を必要な分だけ生産することができたら、現状ほど環境に悪影響を与えません。しかし、在庫の適正化はブランド様の努力だけでできるものではなく、抜本的な改革が必要になります。

大塚 : 私は今年の初めごろまで、2年間ファッション業界を離れていました。そのタイミングでファッション業界を外の世界から見つめたところ、業界の人が思っている以上に課題が深刻であることに気が付きました。

過剰生産について知っている人は多いと思いますが、かつての私のようにこの問題の深刻さを理解している人は多くありません。まずはどれほど深刻な問題なのかをファッション業界に関わる一人ひとりが認知することが、解決への第一歩になるのではないかと考えています。

(※1)日本繊維輸入組合「日本のアパレル市場と輸入品概況2023」
(※2)資料2 ファッションと環境 令和4年度調査報告 衣類回収と再利用の実態を中心として(環境省)P4 より算出

ファッション業界の課題を「Made by ZOZO」で解決する

— ZOZOは2022年9月に、ファッションブランドの在庫リスクゼロを目指す生産支援プラットフォーム「Made by ZOZO」をリリースしました。背景には、過剰生産の抑止があったのでしょうか。

鈴木 : お客様の注文を受けてから1枚ずつ生産する受注生産の取り組みそのものは、プライベートブランドを運営する目的で開発したものです。現在プライベートブランドはサービスを終了してしまいましたが、その時に培った多サイズ生産のノウハウを活用して、ファッション業界の課題解決やブランド様の生産活動を支える「Made by ZOZO」を開発するに至りました。

大塚 : 初めて「Made by ZOZO」について知ったときは、とても驚きました。通常であれば商品を在庫するため、色数、サイズ数を絞り込む必要がありますが、「Made by ZOZO」を利用すれば、商品を在庫する必要がないため、在庫リスクゼロで多色多サイズの展開が可能になります。

また、「Made by ZOZO」を利用すれば、在庫リスクを気にせずに新しい商品を企画し、これまで知り得なかったお客様のニーズを知ることもできます。そしてそれは新たな売上の創出につながりますし、在庫切れによる機会損失の抑止、環境問題の解決を同時に実現できる。これほど画期的なサービスは、これまでになかったと感じています。

鈴木 : ありがとうございます。まだまだ出来ること、やりたいことがたくさんありますので、ブランド様と共に「Made by ZOZO」をもっともっと成長させていきたいと思います。


大塚 : ブレイクスルーを起こすのは、私たちブランドの役割だと思っています。大量生産や廃棄の問題は今に始まったわけではなく、ファッション業界で働く人であれば、その存在を知っていたわけです。しかし、バリューチェーンの構造や技術的な観点から、見て見ぬふりをしてきました。

そこにプラットフォーマーであるZOZOさんが立ち向かっていることに感動しました。それに対して我々ブランドは受注生産で製品をつくることが業界の未来にどれだけ有意義であることかを理解して「こんなことはできませんか?」「あんなこともしたいです」と成功例を積み上げていくことで、サービスを盛り上げていかなければいけないと思っています。

見せかけの価値ではなく、存在意義で戦う時代へ

— 「Made by ZOZO」を通じて、ファッション業界の課題解決を推進していくにあたり、どのようなことが求められると思いますか。

鈴木 : やはり、目に見えるブランド様のメリットや成功事例があると、多くのブランド様が取り組みに参加してくれるのではないかと思います。「受注生産でこんな実績が出ているらしい」と話題になれば、気になって声をかけてくれるブランド様が増えます。受注生産という仕組みに注目が集まり、ファッション業界の課題解決に勢いがつくはずです。

大塚 : 「NANO universe」が「Made by ZOZO」を通じてリリースした製品も売れ行きが順調で、手ごたえを感じています。在庫リスクがないことで、挑戦の足取りが軽くなり、ブランドらしさを体現した、トレンドに迎合しない「個性ある商品」をつくることもできるのです。

鈴木 : おっしゃるように、「そのブランド様らしい個性ある商品」が「Made by ZOZO」で生み出せるとなれば、お取引をいただくブランド様の数は自然に増えていくと思います。その流れは、ファッション業界の課題を解決するだけでなく、業界をより盛り上げていくきっかけになるはずです。

大塚 : これからの時代、ブランドには「存在意義」がよりいっそう求められると感じています。

これまでは店舗やスタッフでブランドの世界観を表現できていましたが、コロナ禍をきっかけにECサイトでの購入率が上昇したことで、他ブランドとの差別化が難しくなったからです。

そうした未来において「あなたのブランドはなぜ存在するのですか」という問いに答えられないブランドは、やがて淘汰されていくと思います。

そう考えると、在庫リスクを削減し挑戦の足取りを軽くする「Made by ZOZO」は、単にファッション業界の課題を解決するだけでなく、ブランドが持つ世界観を表現することで、そのブランドであり続けるためのサービスでもありますよね。

鈴木 : 「Made by ZOZO」は、1億枚の服をつくる仕組みではなく、1億人のための服をつくるサービスを目指しています。「NANO universe」さんのように、「存在意義」を持ったブランド様と共にお客様の期待に応え続けられるよう、より良いサービスに育てていきたいと思っています。

大塚 : 鈴木さんをはじめとするZOZOの皆さんは、「NANO universe」にとってチームメイトです。課題の多い業界ですが、人々に喜びを届けられるのがファッションですから、これからも手を取り合ってスタンダードを変えていきましょう。

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