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理想を掲げることが出発点。
ZOZOと「UNITED ARROWS」が目指す、
サステナブルなファッション業界の姿
株式会社ユナイテッドアローズ
経営戦略本部 サステナビリティ推進部 部長
玉井 菜緒
株式会社ZOZO 執行役員
ブランド営業本部 ・ EC推進本部
クリスティン・
エドマン
「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」をサステナビリティステートメントに掲げ、ファッションを楽しみ続けられる社会の実現を目指すZOZO。その手段として取り組んでいる重点取り組みの一つが、「サステナブルなファッションを選択できる顧客体験の提供」です。
私たちと同じ思いを持ち、サステナブルな社会の実現を目指す「UNITED ARROWS」は、「2030年までに環境配慮型の商品の割合を50%にする」という目標を掲げています。
課題が少なくないファッション業界が変化していくには、どのような取り組みが必要
なのか——。
ZOZO執行役員 クリスティン・エドマンと、株式会社ユナイテッドアローズ 経営戦略本部 サステナビリティ推進部 部長 玉井 菜緒氏の対談を通じて、ファッション業界の未来について考えていきます。
ファッション業界が抱える「透明性」という課題
— サステナブルな社会の実現を目指すにあたり、ファッション業界はどのような課題を抱えているのでしょうか。
玉井 : ファッション業界は多くの課題を抱えていますが、課題が解決されていない要因を突き詰めていくと、「透明性」に行き着くのではないかと考えています。
店頭やECサイトで商品を購入する際、いったいどんな環境でつくられた素材で、誰がどのような工程で生産しているのかを想像するのは難しい。そのため、お客様がサステナブルな商品を選びたいと思っても、購入を決める根拠となる情報が少なく、選択肢が限定的になっていると感じるのです。
例えば、私たちの洋服によく使用されているコットンやウール、ポリエステル等は、どこでどのようにつくられ、その過程で生まれるCO2や水、土壌に対する環境負荷はどのくらいあるのか。
こういった、1枚の洋服が完成するまでに及ぼされる環境への影響を知っていたら、手に取る商品が変わったり、シーズンごとに新しい商品を買うのではなく、前年に購入した商品を大切に着続けたりするといったアクションにつながるかもしれません。
クリスティン : ブラックボックスになっている生産過程に透明性を持たせる動きは、日本よりも海外の先進諸国が先進的です。
例えば、EUが2022年3月に発表した「持続可能な製品のためのエコデザイン規則案」では、製品に「デジタルプロダクトパスポート」を付与し、製品のサステナビリティ ・ 循環性に関する情報に確実にアクセス可能とすることを求めています。環境に配慮した商品であることを示すにも、それを公表するに値する指標が設けられており、簡単に「エコ」という言葉を使うことはできません。
しかし、日本ではこうしたルールが存在しません。お客様が商品の背景を知った上で購入できるようにするには、私たち企業が率先してアクションを起こしていく責任があるはずです。
「クレジット」から「ストーリー」の時代へ
— たとえサステナビリティに関心を持っていたとしても、ファストファッションを着用することが当たり前になっている昨今では、ライフスタイルを変えるのは簡単なことではないと感じます。
クリスティン : たしかに、現時点でサステナブルなアイテムは安価でないものも多いので、簡単にライフスタイルは変えられないかもしれません。ただ、Z世代と呼ばれる若い世代では、ビンテージアイテムやセカンドハンドのアイテムが人気になっています。自分らしいアイテムを着用することで、個性を表現しているのです。
こうしたトレンドをさらに大きくしていければ、サステナビリティを意識せずとも、持続可能な社会に貢献することができますよね。
ZOZOは2012年11月に、ZOZOTOWNにブランド古着のファッションゾーン「ZOZOUSED」を開設しましたが、「ネットで古着が買える」という選択肢を提供できたことで、お客様は無意識のうちに持続可能な社会に貢献してきたわけです。
玉井 : ライフスタイルにサステナブルなファッションを取り入れる機会として「お客様が意識せずとも行動できる環境をつくる」ことは重要だと思います。突然「サステナブルなファッションをしましょう」と声を上げたところで、困惑してしまいますから。ただ、お客様の行動の広がりも期待するとしたら、サステナブルの価値もしっかりお伝えしていくと良いのではないかと思います。
私たちは現在、お客様が環境配慮型の商品を選ぶ選択肢をつくるために、「ヒトとモノとウツワ」というオウンドメディアを運営しています。取り扱っているアイテムの紹介をしているのですが、こちらではいわば商品のA面の金額やブランドといったクレジットを押し出すことはしません。B面とも言えるストーリーや関わる方々の思いを伝えています。
クリスティン : 環境配慮型の商品を増やしていくにあたり、商品の背景をしっかりと伝えていくことは、お客様のアクションを変えていく後押しになりそうですね。
欲しい未来の実現は、理想を掲げることから
— 「UNITED ARROWS」では、2030年までに、取り扱い商品のうち環境配慮型の商品の割合を50%にするという非常にチャレンジングな目標を掲げられています。
玉井 : 現在のところ、環境配慮型の商品の割合は2%です。これを50%にまで引き上げようというのは、非常にチャレンジングであり、達成が難しい数字であることは承知しています。
でも、実現したい世界にはこれくらい必要なのだろう。そうであれば、理想を掲げることから始めようと「50%」という目標を設定しました。
現状はまだまだですが、でも、方向を明確に示したことで、社員の意識も変わってきています。2030年を一つの区切りとして複数の目標を設定しましたが、ここに向かって全社一丸となり取り組んでいくつもりです。
とはいえ、私たちだけでは、掲げた目標を達成することは難しい。取引先のみなさま、そして商品をお取り扱いいただいているZOZOさんにも、ご協力を仰ぎたいと考えています。
クリスティン : ZOZOは、AIを主軸とするテクノロジーを活用したブランド様のサポートにも力を入れています。現在、ZOZOTOWNは年間1,100万人以上が利用しているので、お客様の購買履歴から需要を予測すれば、将来的には生産量をコントロールすることも可能なはずです。そうすることで、商品の廃棄率を大幅に下げられます。
また、ZOZOTOWNに開設した情報コンテンツ「elove by ZOZO(エラブ バイ ゾゾ)」では、ブランド様のサステナブルな取り組みや商品も紹介しています。
プラットフォーマーである私たちにできることは、情報とテクノロジーのかけ算でブランド様をサポートしながら、お客様に選択肢を届けていくこと。これからも一緒に、サステナブルな未来をファッション業界から生み出していきたいですね。
玉井 : ZOZOさんは私たちにとって、とても心強いパートナーです。強みであるテクノロジーには、大いに期待しています。
当社も、まずは目の前の目標に向かって全力投球し、いずれはファッション業界にインスピレーションを届けられるような存在になれたら、と思っています。