INTERVIEW
SHIMIZU Toshiaki
Executive Officer
「オリジナルであることへのこだわり」清水俊明の
新人時代- 新人時代について、教えてください。
いつも自分なりの手法を考えて実践していたので、怒られる機会の多い新人だったと思います。
若い頃から、いわゆる“普通”は好きじゃなかったんです。音楽をやっているからか、人の真似をするのではなく、オリジナルであることにこだわりを持っていました。
でも、根は真面目でしたね(笑)。就業前に書庫に向かい、過去の企画書などを見て、先輩たちの仕事から学んでいたこともありました。終業後には、先輩を捕まえて、自分なりの方法論をぶつけて議論したこともありましたね。
新人で右も左も分からない自分を成長させてくれたのは、基礎を大事にしつつ、それでもオリジナルな方法を生み出そうと試行錯誤した日々と、それを面白がり、おおらかに見守ってくれた上司、同僚のお陰だと思います。
単に目立ちたかったわけではなく、お客様にとってより良いサービスを提供できるよう、現状よりも優れた方法を探していたのですが、それを続けた結果が今につながっていますし、今になってもその習慣が根付いています。
- 社会人生活の中で培った、自事(※)のポリシーについて教えてください。
何事もゼロベースで考えることです。
人間という生き物は、どうしても思い込みで行動をしてしまうんですね。「こうあるべき」という常識やセオリーに縛られてしまうので、結果的に誰がやっても同じような結果になってしまうことが多いんです。
でも、それでは大きな成果を上げることは難しい。積極的なインプットで知識を養うことは大切ですが、凝り固まった知識はときに想像性を奪うので、知識やこれまでの経験、先入観などをすべててを捨てて、ゼロベースで自事に取り組むことを大切にしています。
- ZOZOでは、仕事のことを「仕事(仕えること)」ではなく「自事(自然なこと)」であるという意味を込めて、「自事」と表記します
“ソウゾウのナナメウエ”を体感した、
衝撃のキャンペーン- ZOZOでの忘れられない一日について、教えてください。
2011年に、SNSに力を入れようと「ZOZOナンバー」という企画を打ち出しました。これが、本当に強烈な企画で……。
企画の目的は、年末のセールが始まる前に、Twitterのフォロワーを大幅に増やすことでした。そのために、毎日のように缶詰になって議論していたのですが、社長に「どれも中途半端だ」と一蹴されてしまったんですね。
最終的に出てきたアイデアが、Twitter上でエントリー順に発行されるナンバーの末尾が「2020」の応募者に、100万円分のZOZOポイントを配布するというものでした。前後賞もあったので、総額にするととんでもない金額になります。
当時はまだ、現在のように売上規模が大きくない時代です。「本当に大丈夫か?」と不安になりましたが、これが“ソウゾウのナナメウエ”をいくZOZOの真髄なんだと悟りました。
キャンペーンを通じて増えたフォロワーは、約35万人。想像以上の反響でした。自分だけでは、どれほど頭を捻ったところで、これほど破天荒なアイデアを生み出せなかったと思います。アイデアを考えるときは、今でもあの瞬間が思い浮かびますね。
共創する仲間とともに、社会を支えていく
- 10年後のZOZOは、どうあるべきだと思いますか?
会社という枠を超えて、さまざまな場所で出会う「仲間」と強いつながりを持ちながらも、ZOZOらしい社会的価値を提供できる存在でありたいと思います。
普通であれば、「仲間」と聞いて思い浮かぶのは、せいぜい自分の会社のスタッフか、グループ会社のメンバーくらいだと思うんです。
でも、自分の人生に影響を与えてくれるのは、それらの人だけではありません。例えば、出社するまでに電車に乗って、道路を歩いて、コンビニでご飯を買うとします。そこで出会う人たちは、本来みんな「仲間」なんです。
これまでもずっと、「自分たちがよければ、それでいい」という自事の仕方をしないようにしてきましたが、これからはもっと、会社の枠を超えたつながりや、関わるすべての方への感謝、パートナーシップがより重要度を増していくと思います。
それが自然にできれば、多くの方々に応援される会社になり、より社会に提供できる価値が増えていくはずです。
- 2022年、新たに「ワクワクできる『似合う』を届ける」を経営戦略に追加しました。清水さんにとっての「似合う」とは、どのようなものでしょうか。
ひと言で表現するなら、「調和(ハーモニー)」です。
私はライフワークとしてバンドをやっているので、ステージに立つ機会があるんですね。そのときのファッションは、演奏する会場や、音楽を聴きに来てくださるお客様を想像しながら選びます。
そこで自分が好きな服を着ても、調和が乱れて不協和音を生んでしまっては、ライブが台無しになるからです。それはステージ以外の場面でも同じだと思います。
誰にでも好みがあると思いますが、それが時代の空気感だったり、周囲の人の気分と調和が取れていたりする状態が、「似合う」ことだと思っています。
たどり着いた、至高の書き味
- お気に入りの自事道具について、教えてください。
昔から書くことが好きで、万年筆とペンケースを愛用しています。デジタルの時代だからこそ、アナログ、手作りの製品の良さを大切にしたいという想いから、自分のお気に入りの文房具を手元に置き、自事に生かしています。
アイテムにはすごくこだわっていて、ノートはこれまでに何十冊と購入し、納得できる紙質のものにたどり着きました。万年筆も、世界各国のアイテムを購入したうえで、お気に入りの5本を使い分けるようにしています。二つのペンケースも、素材にこだわり職人の高い技術でつくられたものです。
書くことは私にとって、コーヒータイムのようなものなんです。筆を執ると、頭は冴えているのに、心は落ち着く。デジタル主流の時代にあっても、アナログなツールを活用することで、自分だけの休息時間をつくっています。