INTERVIEW
YAMASAKI Takao
Executive Officer
「“鍛錬”の数年間」山﨑孝郎の新人時代
- 新人時代について、教えてください。
新人時代を振り返ると、我慢の時間だったように思います。
新卒で入社した会社では、倉庫での出荷や発注、出荷作業を行うなど、どちらかというと体力勝負の仕事が中心でした。毎日重い荷物を運ぶなかで体を痛めてしまい、それがきっかけで、まったく違う職種へのキャリアチェンジを考え、コンサルティングファームに転職しました。当時を振り返ると、ビジネスパーソンとしてハードな環境で自分を鍛え直し、速く成長したいという気持ちがあったように思います。
コンサルタントとしての仕事は、言葉を選ばずに言えば、とにかく苦しかったですね。第二新卒として入社した当初は、クライアントとの打ち合わせに出席し、議事録を書いて上司に提出するのをひたすら繰り返していました。その議事録に毎回辛辣なレビューをされていたんです。「山﨑くん、全然ダメだね」って(笑)。
とにかく毎日必死で、仕事を楽しむ余裕はありませんでした。文字通り“鍛錬”の数年間です。でも、今になって思うのは、つらいことや、やる意味があるのかと疑いたくなる仕事も、全部が積み重なって今の自分があるということです。ピンポイントで「あのときの経験が役立っているな」と思い出すこともあり、どんな経験も無駄じゃなかったんだなと思います。
- 社会人生活の中で培った、自事(※)のポリシーについて教えてください。
一歩先を思い描いて行動することです。また、行動した後も、過去におこなったことを振り返り、これまで見えていなかった点まで含めて考えるよう意識しています。
例えば、「議事録の取り方」ひとつとっても、そのポリシーを反映させることができます。聞いたことを聞いたまま残すのではなく、後から読む人がひと目で状況を理解できるように、自分で考えて取捨選択をする。私はこれを、コンサル時代に、上司から何度も直されながら学びました。
あの経験があったからこそ、「自分の自事の先に誰が関わるのか、それを見据えたときに、今どのようなアクションを取るべきなのか」までを意識できるようになったと思います。そして、一見地味な作業にも、会社への貢献や自己成長のために、重要な意味があることも学びました。
「神は細部に宿る」なんてことをよく言いますが、今になって、それが本当だと理解できます。もし自事で成果を上げる秘訣があるとするなら、一歩先、三歩先の未来を思い描いて、「これでもか」というくらいにこだわりを持つことだと思います。
- ZOZOでは、仕事のことを「仕事(仕えること)」ではなく「自事(自然なこと)」であるという意味を込めて、「自事」と表記します
ZOZOという冒険の旅へ
- ZOZOでの忘れられない一日について、教えてください。
今でも、面接を受けた日のことは忘れられません。
実は、ZOZOの面接を受けるタイミングで、他社からのオファーを承諾していたんです。でも、エージェントの方から「面白い会社があるから」と勧められ、言われるがままにZOZOのオフィスを訪れました。
正直なことを言うと、最初はZOZOに入社することになるとは想像していませんでした。しかし、そのポジションの直属の上司になる澤田と、部下になるディレクターが同席する面接を受けたところ、言葉にできない魅力を感じてしまって……。彼らは「いい人たち」であり、サービスづくりに「真剣な人たち」だったんです。
気付いた頃には、「入社したい」と、気持ちが180度変わっていました。いま振り返っても、あの日の出会いは奇跡的なものだったと思います。
- 2022年、新たに「ワクワクできる『似合う』を届ける」を経営戦略に追加しました。山﨑さんにとっての「似合う」とは、どのようなものでしょうか。
とにかく気になったアイテムを着てみる。着てみて「なんかいいな」と感情が動くのであれば、もう「似合う」状態になっているのだと思います。
……といっても、これは、人から言われた言葉なんです。最近、別のタイミングで、二人の人にたまたま同じことを言われたんですよね。その話を聞いていて、なんかいいなって。
私自身は、着心地や快適さを大事にしていることもあり、シンプルなファッションが多いんです。でも、たまには普段着ないような服を着て、自分なりの「似合う」を広げる体験もしていきたいなと思っています。
ちなみに、今日のファッションは、スタッフにコーディネートしてもらったものです。普段とは違うファッションですが、「なんかいいな」という気持ちが湧いてきたので、きっと似合っているんだと思います(笑)。
サービスの向こう側にいる、お客様の笑顔のために
- 10年後のZOZOは、どうあるべきだと思いますか?
企業理念に「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」と掲げているように、今よりももっと、世界中にポジティブな感情を届ける会社にしていきたいです。
それを実現するには、サービスを利用してくださるお客様の笑顔を、どれだけ思い描けるかが大切だと思っています。
1億円の売上の背景には、例えば1万円のシャツを買ってくださった1万人のお客様がいるわけです。その1万人のお客様全員が笑顔になっている状態を、僕たちは目指すべきだと思っています。
「今日はいつもよりオシャレをしてみよう」「明日のデートは新しい服を着ていこう」といった、お客様のポジティブな感情を積み重ねた結果が、売上なのです。
事業を成長させるとなると、数字にばかり目が行きがちですが、その先には必ず「人」がいることを忘れてはいけません。数字とお客様の幸せ、そのバランスを取り続けられるよう、メンバーを引っ張っていきたいと思っています。
キャリアをひらいた、特別なボールペン
- お気に入りの自事道具について、教えてください。
20代の頃に、家族からプレゼントしてもらったモンブランのボールペンです。コンサルティングファーム在籍中にもらったのですが、書く機会が多く、よく使っていましたね。
その後、スペインに留学したのですが、留学中もこのボールペンを使っていました。私のキャリアがひらけるチャンスのそばに、いつもいてくれたアイテムです。
実は、部下が昇進した際に、モンブランのボールペンをプレゼントしたことがあるんです。誰かのキャリアがひらけるチャンスのそばに、あのボールペンがあってくれたら嬉しいですね。