2024年11月25日
トピックス
コンピュータグラフィックス分野のトップカンファレンス 「SIGGRAPH Asia 2024」にて論文採択
~ 着衣シミュレーションにおいて重要な衝突処理技術により、アパレル生産の自動化を目指す ~
ファッションEC「ZOZOTOWN」(https://zozo.jp/)を運営する株式会社ZOZO(本社:千葉県千葉市 代表取締役社長兼CEO:澤田 宏太郎)は、当社所属社員が執筆した論文「A Cubic Barrier with Elasticity-Inclusive Dynamic Stiffness」(邦題: 動的弾性剛性を考慮した三次バリア関数)が、コンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関するトップカンファレンス「SIGGRAPH Asia 2024」のTechnical Papersに採択され、TOG(Transactions on Graphics) 特別号(※1)に掲載されたことをお知らせします。本研究成果は、当社生産プラットフォーム開発本部(※2)に所属する安東 遼一によるものです。
「TOG(Transactions on Graphics)」は、数あるコンピュータグラフィックス雑誌の中で権威ある学術国際ジャーナルの一つです。本研究成果は2024年12月3日(火)~6日(金)に東京国際フォーラムで開催される「SIGGRAPH Asia 2024」にて英語で発表されます。また、同学会のBOF(Birds Of A Feather)セッション内にて執筆者本人が日本語解説を行う予定です。
(※1)https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3687908
(※2)「Made by ZOZO」などの生産支援事業において技術開発を担う部署(参考:2022年8月25日付当社のプレスリリース:ファッションブランドの在庫リスクゼロを目指す 生産支援プラットフォーム 「Made by ZOZO」による受注販売を9月1日開始)
<研究背景>
当社の生産支援事業では、製品企画から販売に至るまでの工程の自動化を目指しています。一般的にアパレル生産では、企画を立て、複数回のサンプル作成によってデザインチェックを行い、数ヶ月かけて販売に至りますが、商品のデザインや仕様等選定の自動化、2Dパターンや3Dサンプルの自動生成を実現することで、各工程の時間を大幅に短縮することが可能となります。
今回の研究テーマである、コンピュータ上での着衣シミュレーションに欠かせない「衝突処理(物体が衝突、また衝突時の反発力の計算処理)」技術を掘り下げることによって、販売に至るまでのリードタイムの短縮や環境資源の使用削減、世の中のニーズに合わせたクイックな商品展開が可能となります。本研究は、この課題解決を目標として発足しました。
<論文内容>
物理現象のシミュレーションにおける衝突処理は、物体の衝突検知と反発力の計算が重要です。従来の方法では信頼性と効率性の両立が難しく、計算が破綻するという課題がありました。本論文では、弾性項を考慮した反発力のアルゴリズムを提案し、動的弾性項を用いることで安定したシミュレーションを実現しました。これにより、大規模な衝突処理が可能となり、アパレル生産の自動化という目標の達成に貢献します。
<今後の展望>
布地の挙動をシミュレーションで再現するには計測が必要で、これが自動化の障壁となりますが、本論文で発表した大規模衝突処理技術により、布地を構成する糸を正確に計算することで、アパレル生産の工程の一部を自動化できる可能性があります。当社は、今後も物理シミュレーションを応用した技術の研究を継続し、より利便性の高いプロダクトの構築とサービスの向上を目指し、研究・開発に努めてまいります。
<論文の概要>
タイトル
「A Cubic Barrier with Elasticity-Inclusive Dynamic Stiffness」(邦題: 動的弾性剛性を考慮した三次バリア関数)
著者
株式会社ZOZO/安東 遼一
本研究成果はGitHub上にてApache v2ライセンス下でオープンソースとして公開されています。(※)
※ https://github.com/st-tech/ppf-contact-solver