統合報告

ステークホルダーインタビュー

産学官連携の「持続可能な地域づくり」のロールモデルに。
ZOZOと千葉市の挑戦

株式会社ZOZO
フレンドシップマネージメント部
ディレクター

梅澤 孝之

千葉市長

神谷 俊一

千葉大学大学院
人文公共学府博士後期課程

郡司 日奈乃

「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」をサステナビリティステートメントに掲げ、ファッションを楽しみ続けられる社会の実現を目指す「ZOZO」。その手段として取り組んでいる重点取り組みの一つが、「持続可能な地域づくりへの貢献」です。

持続可能な地域をつくるにあたっては、次世代を担う若者の育成が必須です。なかでも、新しい事業を創造し、リスクを恐れずに挑戦する「アントレプレナーシップ(起業家精神)」の醸成に注目が集まっています。

こうした状況下で、ZOZOが本社を置く千葉市は、「ちばアントレプレナーシップ教育コンソーシアムSeedlings of Chiba(以下、Seedlings of Chiba)」を立ち上げ、主に小中学生に対するアントレプレナーシップ教育を実践しています。

ZOZOは「Seedlings of Chiba」に参加しており、これまでに出前授業を開催するなど、産学官との連携を図りながら、次世代に向けたアントレプレナーシップ教育に取り組んできました。

産学官が三位一体となることで、地域の未来はどのように拓かれていくのでしょうか。

ZOZO フレンドシップマネージメント部ディレクター 梅澤 孝之と、「Seedlings of Chiba」の会長を務める神谷 俊一千葉市長、「Seedlings of Chiba」の立ち上げメンバーであり、千葉大学大学院人文公共学府博士後期課程 郡司 日奈乃氏の鼎談を通じて、持続可能な地域をつくる取り組みについて考えていきます。

子どもたちに、世の中を変えていく力を

— 千葉市では、産学官が連携する教育活動を実践されています。そのうちの一つに、ZOZOが参加する「Seedlings of Chiba」がありますが、どのような経緯で発足したのでしょうか。

神谷 : 現代は「正解のない時代」とよく言われます。このような時代を生き抜いていくには、取り組む力、自分の考えを周りに広げる力、協働的な学びから価値を見出す力が必要です。これを得るためには、学校教育だけでは不十分だと考え、「Seedlings of Chiba」を立ち上げました。

千葉市の人口は2020年代前半をピークに減少に転じる見通しです。自分たちの街で経済を発展させ、働く場所をつくっていかないと人口減少が加速してしまう。こうした「地域の課題」を解決し、持続的な発展のためには、自ら考えて答えを導き出せる人材が必要であり、「Seedlings of Chiba」で千葉市の将来を担う若者を育てていきたいと考えています。

ZOZOさんに協力を仰いだのは、世の中を自らの手で変えていく「アントレプレナーシップ」に溢れた企業だと感じるからです。ZOZOさんは、これまで革新的なサービスをいくつも生み出し、固定的だった「働く」ということのイメージもガラリと変えてきています。

まだ社会に出る前の若者たちが、ZOZOさんのアイデンティティに触れることができれば、生まれ持ったポテンシャルを最大限に発揮できるかもしれない——。そんな思いから、お声がけをさせてもらいました。

梅澤 : ZOZOでは、2030年までに20歳未満の次世代100万人と「つながり」を持ち、地域の活性化に貢献するという目標を掲げています。お客様や働く仲間たちに素晴らしい価値を提供するだけでなく、次世代の若者とつながって、地域社会に良い影響を与えていくことが、企業の責任だと考えているからです。
こうして「Seedlings of Chiba」にお声がけをいただいたことは、私たちとしても嬉しい限りです。

“ソウゾウのナナメウエ”で、社会はもっと良くなる

— 「Seedlings of Chiba」では、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。

郡司 : 私たちは、「未来の花(おとな)を、カッコよく。」 をスローガンに掲げ、“子どもの「稼ぐ力」が育つまち ・ 千葉の実現”を組織理念に様々な取り組みを実施してきました。

子どもたちの中にアントレプレナーシップが育つよう、スタッフが学校に赴いて授業をおこなったり、会社や経済の仕組みを学び、疑似体験するプログラムの企画 ・ 運営、コンソーシアムの理念を広げることを目的としたシンポジウムを開催するなど、幅広く活動しています。

ZOZOさんとは、出前授業の開催に加え、中学生が学校で着る服装について考え、学校のアイデンティティや、自分たちが大切に守り続けたいものなどを見つめ直すワークショップを実施しました。すでに存在するスタンダードを自分たちの手で変えていくチャレンジは、生徒たちにとってかけがえのない経験になったと思います。

神谷 : スタンダードとは、言うなれば「常識」です。つまり、スタンダードを変えるということは、その時点では、「非常識」な行為なわけです。でも、それは社会にとって素晴らしいアクションになりうる可能性があります。いわば「非常識」を「常識」に変えていく。

固定化されていた考えを変えることは、社会にとって必要なアクションです。これを生徒たちが自らの手で実践することには、非常に大きな意味があったと思います。「自分たちの思いで社会をデザインしていけるんだ」という意識を、少なからず持てたはずです。

梅澤 : ありがとうございます。私たちには「ソウゾウのナナメウエ」という「ZOZOらしさ」を表す合言葉があり、誰も挑戦していないことにチャレンジすることを大切にしているんですね。だからこそ、まだ世の中にないサービスを生み出せたり、他社にはないカルチャーを育んでこられたのだと思います。

キャリア教育をおこなう出前授業で「ZOZOらしい働き方」についてお話しすると、子どもたちの目が輝いたり、先生方が感心してくださったりと、私たちにとっても喜ばしいことが多々ありました。まだ取り組みは始まったばかりですが、これからもファッションやテクノロジーなど、ZOZOが持つ強みを生かして、次世代の若者達を最大限サポートしていきたいと考えています。

千葉市を地方自治体のロールモデルに

— これまでの取り組みを振り返り、これからZOZOに期待していることについて教えてください。

郡司 : これからも、“カッコいい大人像”を示し続けてほしいと思っています。

ZOZOのみなさんは、一般的にイメージする社会人と違って、服装や髪型が個性的ですよね。また、地域の清掃活動に参加されるなど、街に溶け込んで地域の一員として関わろうという姿勢を、日々体現されていると思います。あらゆる取り組みに寛容で、協力的かつ常に前向きな姿勢でいることは、間違いなく“カッコいい大人”そのものです。

子どもたちは、身近な大人を見て育ちます。つまり、そういった大人が身近にいるということは、子どもたちが将来、自分自身で考え行動できるカッコいい大人になれる可能性が高くなるということです。

この連鎖が続いていけば、千葉市はかっこいい大人だらけの街になるはず。10年後、20年後を想像すると、千葉市はもっともっと素敵な地域になっていくのではないかと思います。

神谷 : これからも世界を変えていく挑戦を、千葉市で実践してくれたら、これほど嬉しいことはありません。

ZOZOさんは、「ZOZOSUIT」の開発や、最近では受注生産プラットフォーム「Made by ZOZO」のリリースなど、世界に通用するサービスを多数展開されています。ゴルフ界最高峰のPGA TOURトーナメント「ZOZO CHAMPIONSHIP」を開催するなど、事業以外の取り組みも世界規模です。

グローバルで事業展開をしているZOZOさんが、ローカルを大切に我々と一緒に挑戦してくださる。そういった企業は、世界を見渡してもそう多くないと思います。

梅澤 : ZOZOは千葉に拠点を置き、千葉で成長してきました。長年地域の方から多大なバックアップをいただいてきたので、これからも千葉で頑張り、これまでいただいた恩を、少しずつでも返していけたらと思っています。

神谷 : 千葉市は市民活動が活発な地域です。歴史を振り返っても、その時代に必要なチャレンジをしてきています。海を埋め立てて京葉工業地域をつくったり、まだ大規模な見本市の開催が多くなかった時代に全国に先駆けて幕張メッセを建設したりと、エネルギーのある地域なんです。

こうした地域には、やはりアントレプレナーシップを持った人が多くいます。官民の壁を越えてアントレプレナーシップを発揮し、そこに若い力が加われば、地方自治体のロールモデルになれるはず。

これからも手を取り合い、千葉市を「持続可能な地域」として盛り上げてもらえたらと思っています。

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