統合報告

ステークホルダーインタビュー

緻密な計算と大胆なアイディアで
ECビジネスのカーボンニュートラルに挑む

株式会社ZOZO 執行役員
フルフィルメント本部 ・ ECマネジメント本部 ・
基幹システム本部 ・ ホスピタリティ本部

田代 将広

ヤマト運輸株式会社
ナショナルECアカウント営業部 執行役員

大友 丈晴

「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」をサステナビリティステートメントに掲げ、ファッションを楽しみ続けられる社会の実現を目指す「ZOZO」。その手段として取り組んでいる重点取り組みの一つが、「持続可能な地域づくりへの貢献」です。

サステナブルな社会を実現するにあたり、世界各国でアクションを求められているのが、カーボンニュートラルの達成です。日本政府は2050年までの達成を宣言しており、これに向けて多くの企業が取り組みを開始しています。

世界的な協力が求められているカーボンニュートラルの達成に対して、私たちが取るべきアクションとは何か——。

ZOZO執行役員 田代 将広と、ヤマト運輸株式会社 ナショナルECアカウント営業部(取材当時) 執行役員 大友 丈晴氏の対談を通じて、物流を基軸としたカーボンニュートラル実現の未来について考えていきます。

創業時から続く、理想主義のパートナーシップ

— 経済産業省による調査(※1) によると、コロナ禍の影響もあり、国内EC市場の規模は増加傾向にあります。これにより、輸送にともなうCO2の排出量増加を懸念する声もありますが、どのように捉えていらっしゃいますか。

大友 : カーボンニュートラルの実現に向けては、当社も様々な取り組みを実践しています。再配達削減によるCO2排出量削減についてよく話題にあがりますが、2020年6月から非対面での受け取りやお客様の指定場所での「置き配」などに対応したサービス「EAZY」を開始しました。このサービスでは、お客様に一度で荷物を受け取ってもらえるので、結果的にCO2排出量削減にも貢献しています。

「EAZY」を導入したことや、オープン型宅配便ロッカーPUDOステーションでの受け取りなど、便利な受け取り方法の普及により、再配達によるCO2排出量の増大を抑えることはできつつありますが、それでもカーボンニュートラルの実現にはほど遠い状況です。当社の取り組みとしてはEVや太陽光発電設備の導入などの取り組みも進めていますが、お客様の利便性向上と環境への配慮を両立するのは簡単ではなく、お取引先様と協力させていただきながら、今後も気候変動へ取り組んでいきたいと考えています。

とりわけZOZOさんとは、これまでいくつものチャレンジを実施してきました。「EAZY」を最初に導入していただいたのもZOZOさんでしたし、最近では千歳市のヤマト運輸のリレーションセンターを活用し、北海道地区の商品はそこで初めて個別に梱包して発送しています。

田代 : リレーションセンターのある地域へは、物流拠点「ZOZOBASE」から商品を梱包せずに運ぶことができるので、幹線輸送の積載効率が向上します。これにより、例えばトラックを複数台利用していたところを、1台で輸送できる。すると、CO2排出量を大幅に削減できるのです。

こうした取り組みは、必ずしも経済合理性があるものではありません。とはいえ、企業が果たすべき責任を無視することは、「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」を経営理念に掲げる私たちのポリシーに背くものです。一筋縄ではいかないことも、工夫の合わせ技で乗り越えていければと考えています。

大友 : いわゆるトラックドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限される「物流の2024年問題」により、このまま対策を取らなければ、全国でおよそ14.2%(※2)の荷物が運べなくなる可能性があるとされています。リレーションセンターを使った取り組みは、こうした持続可能な物流課題へのソリューションにもなり得るため、積極的に活用いただきたいです。

(※1)出典:経済産業省ウェブサイト 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

(※2)出典:経済産業省ウェブサイト 第3回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 資料1「物流の2024年問題」の影響について(株式会社NX総合研究所)

工夫の合わせ技で、カーボンニュートラルの実現を
目指す

— 複数の課題が複雑に絡み合っているからこそ、工夫を重ねることが重要なんですね。

田代 : おっしゃる通りで、リレーションセンターを活用した取り組みだけではなく、いくつものソリューションを掛け合わせることが重要です。例えば弊社では、配送時の積載効率の向上や、梱包資材の資源の無駄使いを減らすために、取り扱う商品の3辺を計測するシステムで、発送作業時に最適な梱包資材を表示し、商品を梱包するZOZO箱(段ボール)のサイズを限りなく小さくするチャレンジもしています。今後はこの精度をさらに高めていく予定です。また、発送に使用している段ボール箱のほとんどは、FSC認証を受けたものです。

大友 : カーボンニュートラルを目指す取り組みに限らずですが、ZOZOさんはこれまでも、課題をともに解決してきたパートナーです。あらゆる新しいチャレンジのタイミングには、ZOZOさんと取り組んできたので、今後も両社がタッグを組んでカーボンニュートラルの実現という目標に取り組むことで、効果を最大にしていきたいと考えています。

田代 : ZOZOとしても、ヤマトさんには創業当初からお世話になっており、お客様への安心 ・ 安全なお届けにおいては絶対の信頼を置いています。私たちも挑戦的な取り組みを支えてくださってきたパートナーだと思っていますので、業界内のロールモデルになるようなチャレンジもしていきたいですね。

消費者と企業が一体になり、新たなエコシステムをつくる

— カーボンニュートラルの実現に向け、現時点で描いている新たな取り組みはあるのでしょうか。

田代 : 実現可能性はさておき、ゼロベースでたくさん相談しています。例えば、ブランド様からの直接配送です。

ZOZOTOWNは基本的に、ブランド様から商品をお預かりして、当社物流拠点の「ZOZOBASE」からお客様のもとへお届けしています。ただ、ご注文受付後にブランド様から商品を取り寄せて発送する取り寄せ商品や不良品の交換品発送ならびに修理品の対応などは、ブランド様の店舗や倉庫から商品を取り寄せて当社拠点からお客様へお届けするケースもあります。これらの商品をブランド様の倉庫から直接配送することができれば、当社を経由することが無いのでよりCO2を抑えることができそうです。

現時点では、個人情報の適切な取り扱いができないことなどが課題として挙げられますが、個人情報が一切見えない伝票の仕組みができれば、直接配送の実現に向けて一歩前進します。

こういった取り組みは、ブランド様のご負担が増えることにもなるので、簡単に実現できるものではありませんが、カーボンニュートラルを本気で目指すのであれば、今以上に企業間の連携も必要になるはずです。技術的な壁を乗り越えつつ、ステークホルダーを巻き込んだチャレンジを推進していきたいと思っています。

大友 : 企業だけでなく、生活者のみなさんのご協力も必要だと考えています。例えば、商品の再配達がなくなるだけで、CO2の排出量を抑えることができる。自分たちの行動が、環境への負荷につながっている可能性を想像するだけでも、持続可能なエコシステムを一緒につくっていく一助になるはずです。

田代 : 「これを実践すれば大丈夫」という解が存在しないからこそ、お互いの知見と技術を提供し合うパートナーでい続けましょう。引き続き、よろしくお願いいたします。

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