企業情報

栁澤 孝旨

INTERVIEW

YANAGISAWA Koji

Director, Executive Vice President & CFO

「ウォール街の世界に憧れて」栁澤孝旨の新人時代

- 新人時代について、教えてください。

礼節はわきまえていたつもりですが、生意気な新人だったと思います。「やるべきことをちゃんとやっていれば、文句はないでしょ?」というスタンスだったので、目の前の仕事には一生懸命でしたが、「新入社員だから」という理由で臆することはありませんでした。

ファーストキャリアは銀行で、紺のスーツに白いシャツのベーシックなスタイルの方が多いなか、支店に配属された初日から、グレーのスーツにブルーのシャツを着て出勤しましたね。映画で観た、ウォール街の世界に憧れていたんです。

その後、念願のディーリングルームに異動しましたが、それまで想像していた世界とは少し違っていたところがありました。とてもやりがいはあったのですが、その一方で、ディーリングルームに移る前に支店で経験した、外資系企業との企業取引の面白さが忘れられなかったのです。そこで心機一転、「もっとダイレクトに企業成長に貢献したい」と思い、コンサルティングファームに転職しました。

転職先にコンサルティングファームを選んだことは、今振り返っても正解だったと思います。

経営戦略とは何かを学び、まったく知見のない業界の情報を毎日のように学び続け、上司に「全くダメ」と厳しいフィードバックをもらう。右も左も分からないひよっこだった私が、経営とはなんたるかを理解できるようになったのは、あの苦しい日々があったからです。

- 社会人生活の中で培った、自事(※)のポリシーについて教えてください。

「自事を選ばないこと」がポリシーです。選り好みせず取り組めば、いつかは身になると思ってなんでもやってきました。

これもコンサル時代の話ですが、私はこれといった専門領域を持たずに、業界を問わずプロジェクトを担当していました。その中には、一般的にはコンサルタントがあまり好まない、地味なプロジェクトも多かったように思います。

でも、そこで得た経験は、すべてが現在につながっているんです。例えば、ZOZOが上場準備に入るときは、とある会社の総務部門の改革をお手伝いした経験が役に立ちました。

また、経験の幅が広いと、自分で責任を持つことができるようになります。部下に依頼した自事が期限に間に合わなさそうな場合でも、最後の最後は、自分でなんとかできる。

若い頃は特にそうでしたが、今でも、どんな自事も選り好みせずにやるようにしています。

  • ZOZOでは、仕事のことを「仕事(仕えること)」ではなく「自事(自然なこと)」であるという意味を込めて、「自事」と表記します

忘れもしない、2007年12月11日

- ZOZOでの忘れられない一日について、教えてください。

東証マザーズに上場した日は、私にとって忘れられない一日です。

ZOZOに転職する以前、いつかはベンチャー企業の中核として、上場を経験したいと思っていました。銀行員としてファイナンスを学んだ後は、それを目指してコンサルタントとして経営を学び、証券会社でマーケットの知識を身に付け、それがようやく結実したタイミングが上場した2007年12月11日だったんです。

私がZOZOに入社した頃は、まだ管理部門が存在せず、稟議の仕組みすら整っていない、文字通り“カオス”なベンチャー企業でした。しかし、そこからスタッフ全員で力を合わせ、会社としての仕組みをつくり、ようやく一つの区切りにたどり着くことができました。

創業メンバーが証券取引所で上場記念の鐘を鳴らしている姿を見たときは、涙が出そうになりましたね。

ZOZOらしさを、より濃く、より深く

- 10年後のZOZOは、どうあるべきだと思いますか?

まずはしっかり、会社として存続していること。そのうえで、「ソウゾウのナナメウエ」というZOZOらしいカルチャーを、より濃くしながら受け継いでいくことが重要だと思っています。

ZOZOはこれまで、地域に根差しながら、自社だけではなくステークホルダー全員が幸せになれるような経営を続けてきました。サステナビリティの取り組みを強化しているのも、そうした理由からです。

この流れを止めることなく、むしろより強いものにしていくためには、新たな事業を立ち上げたり、次の世代を育てたり、新しい取り組みをしていかなければなりません。

いつかはバトンタッチをするタイミングが来るでしょうから、そのときに「良いバトン」を渡せるように日々を積み重ねることこそが、私の役割なのかなと思っています。

- 2022年、新たに「ワクワクできる『似合う』を届ける」を経営戦略に追加しました。栁澤さんにとっての「似合う」とは、どのようなものでしょうか。

「似合う」とは、未知の世界だと思っています。この言葉には、無限の可能性を感じますね。

例えば、まだ着たことがないアイテムを手に取ったり、それを自分のお気に入りの服と組み合わせてみたり、そうやって出合ったことのないものと出合いながら自分らしさを表現することが、「似合う」なのではないでしょうか。

個人的にはいつも、分相応、年相応なファッションをするように心がけています。一方で、今日着ている服は、スタッフにコーディネートしてもらったものです。自分だったら、おそらく選んでいなかったでしょう。

でも、実際に着用してみると、「結構いいかも」なんて思うんです(笑)。この未知の世界に心躍る感情こそが、「似合う」なのだと思っています。

ZOZOの歴史を知る、唯一無二のパスポートケース

- お気に入りの自事道具について、教えてください。

2011年に購入した、FIATとGUCCIがコラボしたパスポートケースです。

CFOに就任してから、投資家とのIRミーティングで毎年海外を訪れていて、いつもその旅路をともにしてくれています。

まだ若かった頃、投資家とのミーティングは、足がすくむほど緊張していたんですね。でも、毎年のように話をしていると、友だちのような関係性になってくださる方もいます。今では「やあ、元気にしてる?」なんてフランクな会話をすることもあります。

その過程を知っているのは、このパスポートケースだけです。これからも引き続き、ZOZOの成長を見守ってくれる存在として、大切にしたいと思っています。